株式会社ITJapan ブログ Ajax vs Flash

Ajax vs Flash

ITJapan Co.,Ltd. CEO Tadanobu Kinoshita

2006/03/10 10:51 - www.itj.jp

前回はほとんどITと関係ないような話を書いたので、今回はガチでIT技術系のお話。ようやく成熟の段階に入ってきたFlashとまだ発展途上のAjaxだ。目指す所は似て非なるものなのか。

ともにWeb上での「リッチクライアント」を目指している。リッチクライアントとは何かというと、現在の普通のWebサイト(ハイパーリンクをクリックすると別のページへとぶ単純かつシンプルな作り)”以外”の、見た人の視覚に訴えるようなWebサイトの事だ。 現在、一般の人は「すごいなぁ」という反応、IT業界の人は「こんなの普通だよ」とか「重いだけ」とかいう反応を見せる。

AjaxとFlashの2つの技術のうち、後者のFlashはだいぶ一般にも浸透してきているように思う。思えば最初にFlashが発表されたとき、よくわかっていないメディアは「すごい技術があらわれた!」と概ねセンセーショナルな反応を見せていたが、開発の現場では「重い」の一言で片づけられてきた。
1990年代後半にはまだ『Flashを使用したサイト→わかっていないシロウトが作るサイト』という定義が成り立っていた。回線速度の問題があるのだが、軽いサイト以外は認められない風潮が色濃くあった。

2000年に入り、ADSLの普及とともに回線速度が上がったおかげで少しづつFlashが浸透してきた。バージョン5、6の頃には初期の頃とはずいぶん状況が変わり、本当の意味で「リッチ」な印象を受ける技術というフィールドを確立させてきた。

ちなみに私がFlashにそろそろ興味を抱きだしたのもこの頃である。それまではWindowsベースのローカルアプリケーション開発がほとんどだったため、Webデザイン/開発はまどろっこしくてやっていられなかった。 「こんな遅い(重い)技術を使う人間はいない」と考えていた。だがFlashの考え方そのものには共感する部分が多々あったため、機が熟すのを待っていた。そう、その頃はまだ本格的な開発をするにはFlashの能力 や環境は物足りなかったのである。パソコンそのものの性能や回線速度(ADSLで1.5Mほど…もう少し欲しい)、FlashPlayerの出来、そして一般の認知度…。

それからしばらくFlashとは離れていたが、ようやく機が熟して来たと判断する出来事があった。それがFlash8の発売である(本当に最近)。待ったかいのある出来で、少々古いパソコンでも最新のFlashPlayerは軽い動作が期待出来た。回線も現在はADSLの50Mとかが当たり前になってきた。光の導入も少しずつ進んでいる。パソコンの性能はいったん頭打ちかと思わせるぐらいだ。
まだサイトの全てをFlashにするには、検索の問題などがあるため少しとまどいがあるが、そういった諸々の問題がクリア出来るなら、オールFlashのサイトはもはや何の問題もない所まで来ている。
Flash8では他にFlashVideoEncoderという動画エンコードのソフトもついているが、この破壊力も凄いものがある。はっきり言うと、マイクロソフトはWindowsMediaPlayerを今後どういう位置づけに持っていくつもりだろうと思ったぐらいだ。
ともあれ、Flashは8の登場でWeb上のリッチクライアント制作ソフトの地位を不動のものにしたかと思われた。「リッチ&動画」の世界、これに「Photoshop」「Illustrator」等のAdobe社と経営統合した事でグラフィックツール全般 ともシームレスに繋がってくる。ゲーム業界で言えばスクウェアとエニックスが合併したようなもの で、最強タッグだ。今後Flashの世界はますます巨大になり、むかう所敵なしになるのではないか?そう思われた。
だが完全無欠と思われたFlashに、強敵が出現する事になる。

人々が驚く時というのはどんな時だろうか。「オッ」となるのは。通常、予期しない、ありそうにない事が起こった時ではないだろうか。

人々はみな、知らない分野の事でも何となく気付く事がある。Webの世界で言うと、たとえFlashがどんなリッチクライアントを構築しようとも、それはFlashというフレームワークの中だけで起こる仮想体験であり、その枠組みを越える事はない。人は、埋め込まれたFlashムービーを「この中では何でも起こるんだろうな」という感覚ですでに見ている。…そう、もう心底びっくりしないという所まで来ているのではないだろうか。

そういう背景でもう一つの革新、「Ajax」が世の中に出てきた。作られた…というか、Ajax自体はJavascript等のWeb上にあるいくつかの技術の集合体なので、実現ベースで言えば2000年でも実現できただろう。現に私も同じような物は趣味の範囲で作っていた。本来はXMLHttpRequestというものを使ってサーバからデータを取得、画面に表示する技術なのだが、ここにきてFlash以外でリッチクライアントを実現する技術の総称のような意味あいに変化してきている 。

今の段階で、人々がWebを見て驚くのは、FlashではなくAjaxを見た時だろう。いわゆるポストバック ~ハイパーリンクをクリックするとこれまでは例外なく再読込が発生し、画面の再描画がなされていた ~がなくなり、全てが直結するような不思議な感覚に襲われる。また、ありえないと思うのは、Flashではない、通常のWeb画面が、何の読み込んだ形跡もないまま、リアルタイムでその画面をアニメーションのごとく姿を変えていく様だろう。

惜しむらくは登場したばかりの技術ゆえ、開発には多数の工程が求められる。昨今の開発環境に慣れてしまった身ではかなりツラいものがある。だが今後業界はこの方向に進んでいくと思われる。フレームワークとしては、Ajaxの方が広い範囲をカバーしていると思われるし、AjaxはFlashの中では扱えないが、Flashは、Ajaxの世界の中のひとつの選択肢としてWebの中に埋め込む事が出来るのだ。

これからも、AjaxとFlashのどちらが業界を制覇するといった感じではなく、共存して発展していくだろう。Webの新たな局面は見えてきた。今後Webはさらに進化する。新しいテクノロジーで驚くのは、人間の原始的な喜びの一つだと信じている私にとって、さらに楽しみな展開になってきたのは間違いない。