マイクロソフト

ITJapan Co.,Ltd. CEO Tadanobu Kinoshita

2004/03/02 17:28 - www.itj.jp

マイクロソフトの評判は良くない。これは当たり前の認識となってしまった。…と考えるのはちょっと待って欲しい。世の中の大多数の人は、未だにマイクロソフトと皆さんが日々戯れているめくるめくIT世界(主にインターネット)とはきちんと結びついていないのだ(嘘だと思うなら、皆さんのお母さんに「マイクロソフトって知ってる?」と聞いてみて欲しい)。
マイクロソフトの作る製品はセキュリティが脆弱だという。これもちょっと待って欲しい。奪われたら本当に困る情報というのは、一体どれだけあるのだろう?あるAという人の持っている情報は、大多数の人間にとってはどうでもいい事だ。もし仮にもっと切迫した状況だとしよう。例えばA社の顧客データが同業のB社にまるまる奪われてしまった………それで?そんな事でB社がまるまる利益を享受すると考えられる人は、机上の空論ばかりで物事を実際にやらない人である。そんなに単純ではない。もっとパーソナルなレベルではどうか?例えばカードの番号…利用停止にすればよい、ただそれだけの話だ。

100%のセキュリティなどこの世に存在しない。あなたが県の役所に勤めていたとして、誰かに「400人分の戸籍情報をくれたら100億円あげる。あなたに迷惑は一切かからない」と言われたら、どうするだろう?
どんな情報でも即座に漏れてしまい、郵便受けやメールボックスにはどこで自分の住所やアドレスを調べたのだろうと言わんばかりの「情報」が毎日のように届くこの現状で、100億円を我慢する大義というのは一体どれほどのものなのだろう?
マイクロソフトは、上記のような事は「叩かれる」「商売をやっている者としての道義上の理由」から決して言わないだろう。ただ思ってはいるはずだ。
「どれほど重要なデータがあるっていうんだ!」と。

マイクロソフトが「WindowsUpdate」等、どれほど分かりやすい形で私たちにクオリティの高い製品を送り続けているのかをもっと考えよう。金額が高い?それは私もそう思う。もっと安くなるべきだ。ただ違法コピーがなくならないので、ある意味でしょうがないだろう。ついでに違法コピーの問題も述べておくと、このあたりでもマイクロソフトは実に意味深い事をしている事に気づく。
よく思い返して欲しい。「Windows2000」「Office2000」まで、製品の性質上いくらでもコピーできるようになっていなかったか?そしてXPの世代になってからも「VL版(ボリュームライセンス版)を残している。
マイクロソフトの上層部が、我々一般人でもその気になればほとんどタダでWindowsとOfficeの環境が手に入る事を知らないわけがない。じゃあマイクロソフトは儲かっていないかと言えば、ビル・ゲイツは相変わらず世界長者番付一位だ。…「コピーされる事」を前提にビジネスモデルを練っているのだろう。そしておそらく「コピーされる事」のプラス面を最大限に利用しているはずだ。
ソフトウェア開発者にとって一番助かるのは、そのソフトが巨大であればあるほどバグチェックをしてくれる人が一番助かる。マイクロソフト製品は対価を払って購入しようと、タダ同然で手に入れようと、インターネットを通じていわゆる「バグチェック」に参加する機会はみんなに平等に与えられる。エラーが起こった時に出るアレだ。マイクロソフトがその気にさえなればバグチェックが送られてきた時点で違法コピー版か判断して利用停止にする事など容易いはずだ。だがそれをしない。結果的にはタダでも製品が手に入れられる事で、世界中のより多くの人から製品の品質向上のデータを集められるようにしているのだ。

「お金出して買ってよ。え?高いからいや?しょうがないなぁ…じゃぁせめてバグ報告だけでもやってよ」という、実に広い人間性(会社性?)があるではないか。今世の中で議論されているセキュリティについての問題、あるいは違法コピーについての問題、すべてが根本的にずれている気がしてならない。きれいに解決したいわけではない。ただそういった問題点は往々にして大きなビジネスの可能性に繋がる事が多いはずだ。マイクロソフトはOSやソフトウェアでは我々ユーザーに対して何でも公開して接するが、このあたりの「本当の核」の部分についてはほとんど語ってはいない気がする。世界一の会社のフトコロの深い部分と、用心深い部分について、我々はもっと注意深く観察しなければならない。多くのアメリカ人はとても偉そうにマイクロソフトを語り、何でも知っているかのように振る舞うので感覚的に騙されやすいが、じゃぁその人とビル・ゲイツとどっちがお金持ちなの?と問いかけた所で、みんな沈黙せざるを得ないほどの差があるはずだ。断言するが、今の世の中のセキュリティと違法コピーに関するほとんどの議論は、根本的な部分で的がはずれている。
「マイクロソフトの視点」はビジネスで成功するためには必要だ。
もしあなたが、一般論に惑わされず自分の考えを突き詰める事ができる人ならば、自ずと道は開ける。辛抱強く考え続ける事だ。