理想はバサロ

ITJapan Co.,Ltd. CEO Tadanobu Kinoshita

2006/06/22 17:35 - www.itj.jp

今回は(も?)ちょっと思い込みの強い話になるのかもしれない。もしかしたら、事実とは全然違うという意味で。でも、ある時点からずっと意識してきた事で、年齢を重ねるごとに確信に近いような感じを持ってきている、そんな話だ。

1988年、私が11歳の時に行われたソウルオリンピックの水泳で、鈴木大地選手が金メダルを獲得した。種目は背泳。ただ目を引いたのは、彼が行ったその独特の泳法、「バサロスタート」だった。

その泳法は、すぐ後に禁止された。理由はスピードが出るために皆がこの泳法を真似した結果、背泳とは異なる競技のようになってしまった (しかも明らかにスピードが出る)からというのが主な理由だったように思う。

今経営に携わる身として、こんな痛快な事はないだろうと思う。衆人環視の中で……みなが見守る中で、堂々と、ルールを破らずに、 一つの種目にも拘わらずあきらかに他の人と違う事をして勝ったのだ。他の選手が木製のバットを渡された中、一人だけ金属バットを持って試合に臨んだのだ。それも昨今まとめて逮捕されたような 胡散臭いIT長者達と違って、極めて合法的に 、正しい喝采を浴びながら。

トップに立つ人間とは、ここを目指すべきだと思う。他の人と同じ種目で、同じように争っているようで、でも実際取り組んでいる内容は全然違う、こういう事をしなければならないと思う。

将棋の羽生さんは以前7冠王を達成されたが、あれも今から考えると同じ熟練のプロ棋士達を相手に どう考えても勝ちすぎている。きっと何かがあったのだと思う。その時代だけ、羽生さんが、他の人と同じように将棋を指しているようで、実は メディアや一般に言われている事とは全然違う捉え方でその種目に臨んでいたといったような。

テーマパークの雄、ディズニーランドもそうだろう。

あきらかにあそこで働く人々のクオリティは他の接客業と差がありすぎる。きっと余所とは違う アプローチで社員教育を施しているのではないだろうか。

ここで、私も世の中に挑戦するベンチャー企業の社長として、常に心がけている事を書いてみたい。それは、上記全てに共通しているのは、情報の波に飲まれずに、粛々と作業を完遂するために集中しているというそんな姿ではないだろうか。

このIT業界も、やはりみなニュースには敏感だ。テレビや雑誌、その他メディアで流される情報に日々目を通している。それはそれで大事な事だ。

だが、そこから自分の頭で考えて自分なりの答えを出している人のなんと少ない事だろうか。だから ある事柄についての結論的な話になると、その番組に登場していた権威ある人や、あるいは記事を書いた記者が書いていたような結論そのままの話になる。 そういった会話がそこかしこで交わされている。

日々、心に留めている事は、情報の波に飲まれずに、大量の情報の中から自分に有効な情報を見つけ出す能力だけは研ぎ澄ましておこうという感覚だ。

自分が何をするべきなのかが分かっていさえすれば、情報の海の中から、その時の自分に必要な情報が必ず見つかると思っている。その情報は光りながら、そんな人に見つけてもらうのを待っているのだ。そうやって一つ一つの情報を確認し、成し遂げたい事を少しずつ日々の努力によってこなす時、いつか私にも「バサロ」が見えるのではないかと思っている。