起業を志した瞬間

ITJapan Co.,Ltd. CEO Tadanobu Kinoshita

2004/03/03 11:05 - www.itj.jp

ぶっちゃけた話、根本的な理由に 「退屈だった」 というのがある。
仕事をさぼっているがために退屈だったのか?というとそうではなく、どちらかと言えば「かなりやりつくした」ゆえに退屈になってしまったのだ。そして、やりつくしたゆえに今後その会社でどれぐらいの仕事をこなすのかも見えてきてしまった。

例えば松井やイチローも、基本的にはそうだったんじゃないかなー…と思う。ある程度の(彼らはピカイチだが…)実力ある者にとって、退屈というのは大敵だ。モチベーションの維持は、技術力を上げるのとは違った意味で厄介な「仕事」だ。もっと上のレベルで、思いっきり自分を試してみたい。家族がどうとか日本がどうとか色々な理由はいくらでも後付けすれば良い。人間が行動を起こす根本的な理由はいつだって、至ってシンプルなはずだ。

参考までに、私は22歳の春に新卒として入社してから28歳半ばの6年近くの会社を辞めるまでの間、まともに休んだのは5日間ぐらいだ。誰に命令されたワケで もなく、仕事の質を高め、より大きな成果を得るために土日も含め自分の時間を費やした。人はみな「働き過ぎ」「適度に休んだ方がはかどる」というが、20代のうちは休みなどほとんど無しで良い。このペースで働き続けても、意欲があり、達成する喜びがあれば体は全然大丈夫だ。
「もっと遊んだほうが良い」という人もいるが、ちょっと待って欲しい。土日とか、夕方7時頃仕事が終われば、それから友達や彼女と飲みに行く時間は充分ある。時間をうまく使えば温泉やスキー、旅行に行く事も可能だ。 いつも遊んでいるわけではないから、お金もほどよく貯まっていくので、何かの記念日には結構値の張る場所で過ごすことも可能だし、家族を海外旅行や温泉旅行に連れて行く事も可能だった。
振り返ってみても、人より働き、人より遊んだなぁーと思える、充実したサラリーマン生活だったように思う。

最終的に思い立ったのは、私はある美容室に通っているのだが (なんとあの新庄選手も通っている)、そこのカリスマ美容師さんから言われた言葉だった。『”思う”って事は、できるって事よ。できなかったら、そもそも思わないもん。みんなできる人に対して「思いつきだけでやってる」って批判するけど、そんなのほっとけばいいのよ。思いつきでやって成功してるんだったら、すごいじゃない?』そこの美容師さんは、私がこれまで会った中でも数少ない本物のプロフェッショナルで、自分の健康に気を配り、いつも最高の技術でおもてなしをするという事を何十年も積み重ねてきた人だ 。
私はプロジェクトXも好きだが、こういう長い年月継続できるという地道さが一番凄いと思う。野球で言えば、初期の大リーグに実在した”球聖”タイ・カッブという 実働24年で生涯打率3割6分6厘の選手のような、モンスター級のハイパフォーマンスを長年継続できた人だ。ちなみにイチローは半分の実働12年だが生涯打率はもう3割4分代に下がって来ている(充分凄いが…)。野球を知らない人のために解説すると、今は1年間でも3割以上打つと一流と呼ばれる。世界の王さんで実働22年で3割1厘、長嶋監督で実働17年で3割5厘だ。

話を元に戻そう。美容師さんひとつとっても、世の中に「当たり」は少ないと思う。 元々格好良い人は、適当な髪型でも格好良く見える。でもそれは美容師さんの腕ではないと思う。長い間私のような普通の容姿の者にとって床屋とは、ヘンな髪型になっても全て自己責任という、「お金を払って格好悪くされる」不条理との戦いの場だった。でもその人は…その美容院は違った。みんな真剣に私を格好良くしようと考えてくれるのだ。本当に気持ちの良い空間で、いつも行くのが楽しい。 もう一つその美容院が他と違う所をあげよう。髪を切りに行くと、普通は「どのような髪型にされますか?」と聞かれる。「前の方どうされますか?」「襟足どうされますか?」「もみあげどうされますか?」…いや、別に聞いてくれてもいいし、そりゃ聞かなきゃ始まらないかもしれないが、カリスマ美容室は違っていて、ほとんど何も聞かずに、パッと私の頭を一別して、良いように仕上げてくれるのだ。「はずれた」髪型にされた事は一度もない。いつも100%気に入る。 自分の想像以上に格好良くしてくれる。自分もITのプロを目指す上で、基本的にはこうありたいと思う。 もちろんお客様から自発的に「こういう風にしてくれ」という要望があれば従うまでだが。パッと、見るではなく見て、全体を把握して改善案を提案する能力というのは、IT業界では必須だろう。

言いようのない「退屈」と、この圧倒的なカリスマ美容師との出会いが、私をサラリーマンの世界から足を洗わせ、もっと厳しい上の世界を目指させた。多分後から色々と後付の理由はついてくるだろう。ただ、直接の動機はこの2点だ。

人間が行動を起こす根本的な理由は いつだって、至ってシンプルだ。