会社を退職する

ITJapan Co.,Ltd. CEO Tadanobu Kinoshita

2004/03/04 13:11 - www.itj.jp

一言で言うと、いきなり、かなりエネルギーが要る作業だ。何だかんだ言っても給料が入り、ボーナスが入る生活を「捨てる」という現実がリアルに迫ってくる。多かれ少なかれ、尻込みするはずだ。
「もう自分は君らサラリーマンとは違うんだ!次のステージへと進む冒険者であり…」とか自分を鼓舞してみても、現実の前ではかなり虚しい。自分の存在が、一気に吹き飛ぶような錯覚すら覚える。

作業としては、上司に退職したい意思を伝え、退職願が受理されたら、後日正式に退職届を書いて提出という、たったそれだけだ。あとは保険証や社章、会社の備品の返還ぐらいか。年金に関しては一応担当者の方に聞いておくと良い。 文章にすると数行ほどで終わってしまうのだが、いざやってみると結構大変だ。
これまで仲の良かった人、悪かった人、支えてくれた上司、良き部下…みなさんにはどんな出来事が発生するだろうか。何に対してもきちんと、立つ鳥跡を濁さずという考えは分からないではないし重要な事だとは思うが、何でもかんでも真剣に対処しすぎると、かえって物事が複雑・困難になっていく事がある。適当で上手くいけば、それにこした事はないので要領よくこなす事だけを考えよう。

退職に当たってのポイントは、次の一点に尽きる。 退職する行動をおこすにあたり、「なーんだ、ここに書かれてあるような大変さはなかった。まわりの人の反対もなく、かなりすんなり行った。 あとは有休消化のみ。やはり俺は廻りや全てを納得させられる能力を持つ、選ばれた人間…」 …とかだったら、今一度自分が起業に値する人間かどうか考えて欲しい。サラリーマンに必要な能力と経営者に必要な能力は必ずしもイコールではないが、それでも今居る所からすんなり抜けられるような人材では、起業しても苦労が多いと思われる。
人間は一人一人違っていて当たり前なので、人間関係は複雑になっていって当前だ。何でもかんでも、どんな局面や場面かに関係なく「争いごと」や「口論」、「仲違い」等をマイナス要素とみなして話を総括したがる人間が多くいるが、退職にあたってはこれらのマイナス 要素とされる部分ができるだけたくさんある方が、「正道」であると思う。
あっさりと今居る場所から抜けられる人間は、極論すれば誰にも接していないのだ。起業する人間としては、あまり褒められたタイプではないのではないだろうか。ちなみに私の場合、10月あたりから退職の意を示していたのだが社長にノラリクラリとじらされて年を越した。なので年の初めの1月4日、多少強引に辞めた。それ以外の方法で辞めるのは不可能だったと今でも思う。

もうひとつ、今みなさんが置かれている環境そのものにも注意を払っておきたい。家族や友達、恋人との距離だ。みなさんに商売を成功させるための物凄い「自力」があれば、環境はさほど問題ではないだろう。ただ そういった人も含めほとんどの人にとって、環境はやはり大事だ。
起業時の、私の考えるベストな状況は次のとおりだ(独身者に限るが)。
家族と仲良く同居していて、恋人がいるもしくは趣味がある。友達は2~3人。以上だ。 私の事じゃないかって?うーんどうだろう。

人間は究極のところ、自立などできない。すぐに寂しさがこみあげてくる存在なので、常に何かに依存している。このあたりの事はすぐに「そういう意味での自立と言っているんじゃなく、精神的に自立して、独立して一人で何もかもやっていきなさいという事だ」という意見を言う人がいるが、 多分精神的にも自立などできないし、する必要はない。
人間はひとりでは生きていけない。そして、人間が生活を営む上においての最小単位はおそらく 2人 だ。人間はひとりで生きていけるように神様から造られてはいない。 余談だが、そういう観点から私はやむを得ない場合を除いて一人暮らしを推奨しない。一人暮らしのメリットは恋人を気軽に呼べるぐらいしか今思いつかない。 生活の大部分を一人で行うというのは理にかなっていない。そんな生物は地球上に存在しない。
①家族と仲良く過ごして、
②恋人と過ごしたり趣味に没頭したりといったプライベートがあって、
③たまに友達と飲みに行ったりする。
こういう環境が理想的だ。
①も②も③も、起業して商売を始める上では直接的な関係はない。 がむしゃらにやって商売で成功した後に結婚して①と②を同時に手に入れ、疎遠になっていた友達とも仲が復旧する事もあるだろう。
とりわけ男なら②の恋人もしくは奥さんのウェイトは高いだろう。男は仕事の世界で、圧倒的な暴風雨や精神的な激痛にさらされ続ける。その反動で、プライベートなひとときにワケわかんない事をしゃべったりワケわかんない行動を取ったりと、少々壊れてしまうのは実は仕方がない事なのだ。そういった部分を受け入れてくれる心の広いパートナーがいれば、仕事の世界で成功する確率というのはうんと上がるだろう。