起業総括

ITJapan Co.,Ltd. CEO Tadanobu Kinoshita

2004/04/03 17:53 - www.itj.jp

ほぼライブでお伝えしてきたこの起業までの道のりだが、ついに営業開始の運びとなった。この2ヶ月でロボット型検索エンジンにもちょこちょこと引っかかるようになったらしく、かなりの方がこの連載に目を通して頂いているのが分かった。ありがたい事である。実際にメールにて激励して頂いた方々に、この場を借りてお礼を申し上げたい。

振り返って見れば、1月に退職してから3月までの2ヶ月間はあっという間だった。
特に3月は起業前の準備等で毎日色々な事が目まぐるしく起こり、「早く開業したい」と願う日々が続いた。まだ何もない事務所に、早く来てしまった椅子が5つだけという状況で、何をしろというのだ…という感じで1日中椅子に座っていた日もあった。
世間でも突拍子もない事が起きた。一つは3月の初めに長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督が病気で倒れられた事である。聞けばまだ68歳。健康に気をつかっておられる方だと思うので、まだまだ劇的な回復は充分可能だと思う。アテネの指揮を巡って論議があるが、私個人としては行かせてあげたい。男に生まれて、国を代表して世界と戦うというのは、何ものにも代え難い喜びだと思うのだ。ただ、家族はそれでも 監督を守るため辞退を申し出るだろう。それは当然だ。
それにしても思い立って長嶋監督の現役時代の記録を調べてみたが、これは凄い。王さんと比較され「記録の王、記憶の長嶋」とされるが、今の時代の現役選手で長嶋監督に勝てる人って何人いるだろうか?ほぼ三冠王という年が2回もある。これで人間的にもテレビで見ている限り楽しい方だ。真のスーパースターだ。
もう一つはこれまたアテネの女子マラソン選考会。国民栄誉賞の高橋尚子さんが落選した。私はアテネで走るQちゃんが見たかったクチだが、それでも選ばれた3選手も全く遜色ないと思う。女子マラソンは人材の宝庫だ。という事であれば既に金メダルという一番の勲章を手に入れたQちゃんはもうお休みして、若い世代に機会を譲ってあげたと思えば良いと思う。どんな分野でもそうだが、やっぱり若い人がどんどん前へ出ていかないと…。
一方でラドクリフや世界の強豪達はQちゃんという虎と戦わずにすむ事ができる事でホっとしているだろう。
選ばれた3選手は全員20歳代だ。みんなが通る道だが、20代というのは、人生の中で一番実質的に不安がない年代、無敵の年代だと思う。体力はあるわ、働けるわ、まだまだ見た目もイケるわで、トータルで見て一番マイナス要素が少ない。日頃蓄えた力を解放して是非とも世界の強豪に日本の層の厚さを見せつけて欲しい。(※後日追記。野口みずき選手が見事金メダル!)

世間では色々な事があったが、それでも私は私でこれから経営者として生きていく。ITで世界を駆け巡る。自分のやりたい事が仕事になった喜びを今だけかみしめて、明日から自分の全てを仕事に捧げ(Dedicate)たいと思う。それは多分長嶋監督であり、高橋Qちゃんであり、傷つきながらも日々を楽しげに生きてきて、 感性や心のレベルを下げて来なかった人達の、魂のレベルでの感覚の共鳴(Resonant)ではないだろうか。

22歳で大阪の総合商社に入社してから6年近く、ほとんど休まずに働き続けた。バブル後の不況真っ直中で(とりわけ大阪はひどかった)、現場の最前線での「生きたシステム」の構築に自分の存在の全てを捧げてき た。営業、開発、サポート、総務、経理 、販売管理・営業事務系…ほとんどの業務を経験した強みが、 例えどんな一部分だけのシステムであれ、会社全体から見た視点で構築できるという強みとなっている。
結局は単にパソコンに詳しいというだけで、ほとんど誰とも接して来なかった人が作ったソフトウェアと、社会で大勢の人間の荒波にもまれた人が作ったソフトウェアには天地の差があるという事をこれから証明する戦いになるのだろう。
世の中には色んな人がいて、そのほとんどが自分とは全く違う性質がある。
自分とは違う仕事に対する考え方、自分とは違う 他者から言われた事の捉え方、自分とは違う立場、自分とは違う人生…激しくぶつかりあって、ケンカして、口もきかなくなって、それとなく理解してくれる人もいて、関係ないよって人もいて、そんな複雑な中でなぜかみんなで笑える時があって…。振り返れば私は何という幸せな環境で実力を蓄えてこれたのかと、今私と関わった全ての方々に感謝している。

その中でもやはり今日まで何一つ不自由なく育ててきてくれた父母と 、今より50年前京都の山奥からまだ幼かった父を連れ神戸に流れてきて、何もない中でただ食べるためだけに工事現場で働きながら今の木下家の下地を築き上げてきた祖母に心からの感謝と尊敬を送りたい。ちなみに祖母は余裕で100歳まで生きるほど元気。抜群のオーラ。そうありたいものだ。

食べるために必死で働かねばならないという事を知らない私が今、一族で初めて株式会社を立ち上げて生きて行こうとしている。人生とはなんと不思議な巡り合わせで成り立っているのだろうか。